司法書士の中嶋です。
私は司法書士登録をしてからすぐに独立開業をしたのですが(いわゆる即独)、それまでは翻訳業をメインとする会社の代表をしており、現在では翻訳会社と司法書士事務所の経営を兼業で行っています。
本記事では、司法書士の副業(兼業)の可否や、副業としての司法書士の魅力について書いてみたいと思います。
まず、実例があるのかどうかは分かりませんが、一般的な企業勤務の方(いわゆるサラリーマンの方)が副業で司法書士業務を行うのはかなり難しいと思います。
司法書士の副業自体は禁止されていないのですが、司法書士には司法書士法や司法書士倫理の規定によって独立性(司法書士倫理第5条)や依頼に応ずる義務(司法書士法第21条)が求められています。
サラリーマンで雇用されている立場であれば十分に独立性が確保されているとは言えませんし、司法書士業務を勤務時間外である平日の夜間や土日に行うとしても、役所や銀行が開いているのは平日の日中ですから依頼に応ずる義務に十分に応えられるとは思えません。
司法書士登録を行う際に兼業の有無は確認されるかと思いますが、私も、大阪司法書士会経由で司法書士登録を行う際に、司法書士法や司法書士倫理に規定されている前述の独立性および依頼に応ずる義務、秘密保持義務(司法書士法第24条、司法書士倫理第10条)、事務所2箇所設置の禁止(司法書士法施行規則第19条)に違反することはない旨の上申書を書いて日本司法書士会連合会に提出する必要がありました。
私の場合は、元々個人事業主として行っていた翻訳業を法人化した1人株主兼代表取締役なので他人に雇用されたり指示を受けたりする立場にはなく独立性が保たれること、翻訳業は他の翻訳者とも協力しながらほぼ全ての業務をオンラインで行っており、スケジュールにも融通が利いてお客様と実際に会う機会もほとんどなく、依頼に応ずる義務やその他の義務に違反する恐れがないことなどを記載しました。
結果として無事に司法書士登録されることになりましたが、そもそも司法書士は公務員ではなく独立開業するのであれば個人事業主になりますから、副業を過度に制限することは日本国憲法第22条第1項に規定されている職業選択の自由に抵触するように思います。
個人的には、「生活するのに十分な収入が得られる仕事を保証することができないのであれば副業を禁止するべきではない」と思いますね。
地域や環境によって差はあると思いますが、司法書士として実務経験やコネもなく即独立開業した場合、よほど営業活動を行うのでもなければ仕事はすぐに来るものではありません。
私の場合は他の仕事もあって集客にはそれほど力を入れておらず営業活動はウェブサイトのみで行っているのですが、仮にウェブサイトがなければ最初の1~2年で1件も仕事が来ていなかったのではないかと感じるほどです。
開業した当初は翻訳の仕事で司法書士業務から生じる赤字を大幅に穴埋めしている状態でしたので、他に仕事をしていて良かったと思っています。
他に収入源がありますと経済的に焦ることがありませんし、司法書士業務にも落ち着いてじっくりと取り組むことができます。
司法書士として即独立される場合は経済的に困窮する可能性も十分に考えられますので、可能な範囲で副業することも視野に入れておいた方が良いかと思います。
私がお会いした司法書士の方ですと、他の士業との兼業(行政書士や土地家屋調査士が多い)や大学の講師をされている方などが多い印象ですが、全国的には議員をされている方もたまに見かけますね。
司法書士の兼業としては、他にもオンライン業務ができるフリーランス(例えば、ライターやウェブデザイナーとか)などは相性が良いのではないでしょうか。
あるいは、司法書士試験の受験生がバイトで生活費を稼ぎながら合格を目指すように、司法書士業務が軌道に乗るまではバイトでも何でもするくらいの覚悟がある方が上手くいくかもしれませんね(余談ですが、私が学生の頃は時給は600~700円台が普通だったのですが、今では1,000円は当たり前なので羨ましい限りです)。
以上、自らの経験を元に司法書士と副業に関して書いてみました。
いずれにせよ、司法書士として独立開業を目指すのであれば生活費や資金繰りの問題は切り離せませんから、副業の可能性も含めてしっかりと計画されることをおすすめします。