司法書士の中嶋です。
株式会社や合同会社などの会社を設立される際、まずは商号(会社名)を決定していただく必要があります。
商号に関しては使用できない文字や記号があるのですが、それに関してはまた別の機会に触れることにして、本記事では同一・類似商号の調査について解説したいと思います。
商号には「同一商号・同一本店の禁止」の規定(商業登記法第27号)が適用され、全く同じ住所において全く同じ商号の会社を登記することはできません。
商業登記法第27条
商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。
全く同じ住所とは同じビル内に多くの会社が入っているようなケースが想定されますが、そもそも一軒家ですと既に別の会社が登記されていない限り問題にはならないでしょうし、この規定が適用される場面は極めて限定されているように思います。
しかし、住所が異なるからと言ってどのような商号を使用しても良いかと言えばそんなことはなく、前述の商号に使用できない文字や記号以外にも、他人と同一または類似の商号を用いることは会社法第8条やその他の法律によっても規制されています。
他人の著名な商号と同一または類似の商号を使用することは不正競争防止法によって「著名表示冒用行為」(不正競争防止法第2条第1項第2号)として禁止されていますし、他人の商品または営業と混同を生じさせる行為も「混同惹起行為」(不正競争防止法第2条第1項第1号)として禁止されています。
ちなみに、「著名表示冒用行為」と「混同惹起行為」の読み方はそれぞれ「ちょめいひょうじぼうようこうい」と「こんどうじゃっきこうい」となります。
法律用語は読みづらいものが多いので、法律テキストに出てくる難解用語には振り仮名を付けて欲しいと以前から思っています(笑)。
それはともかく、問題になりやすいのは、分かりやすい例で言えば「ソニー」の名前で電化製品を販売したり、「トヨタ」の名前で車を販売したりするようなケースが挙げられるでしょう。
そのような商号を使用した場合には、相手方からの商号の差止請求や損害賠償請求が認められる可能性があります。
ですので、商号を決める際には、とりわけ同一地域において同一または類似の商号で同種の事業を行う会社がないかなどを事前に調査しておくことをおすすめします。
商号の調査方法はインターネットや電話帳で調べるという方法もあるでしょうが、必ずしも全ての会社が掲載されているとは限らず正確ではありません。
私が商号調査の際によく利用するのは法務省が提供する「オンライン登記情報検索サービス」です。
「登記・供託オンライン申請システム」で申請者情報の登録をすると、「商号調査」から既に登記されている会社(法人)の商号(名称)および本店所在地を検索することができます。
それ以外にも、国税庁が提供する「法人番号公表サイト」でも同様に商号(名称)および本店所在地を検索することができます。
「法人番号公表サイト」は申請者情報の登録は不要なので初めて商号調査をされる方にも使いやすいかと思います。
ただし、これらの方法ですと商号(名称)および本店所在地しか分かりませんので、事業目的を含めた会社の詳細な登記情報を知りたい場合は、「登記情報提供サービス」を利用するのがおすすめです。
「登記情報提供サービス」は登記簿に記録されている登記情報をオンラインで閲覧できる有料のサービスで、法務局の窓口に行ったり郵送で登記事項証明書を請求したりすることなく、簡単に登記情報を確認することができます。
また、商号に加えて商標(商品やサービスを区別するためのマーク)の調査を行いたい方は、「特許情報プラットフォーム」で簡易検索を行うことができますが、詳細に関しては弁理士などの専門家に相談された方が良いかと思います。
以上、商号調査の必要性と方法について簡単にご紹介しました。
どこまで調査を行うかは時間や費用との兼ね合いもあるのですが、「同一商号・同一本店の禁止」に抵触しないか確認することはもちろん、同一地域において同一(または類似)の商号で同種の事業を行う会社がないかくらいは上記にご紹介した方法で確認しておくことをおすすめします。