「司法書士試験に合格したのは運が良かったからだ」
周りの合格者との間でもネット上でもこのような話題がちょくちょく出てきますが、本当にそうなのでしょうか?
goo辞書で調べてみると、「運」とは「人間の意志を超越したはたらき」「天命」「よいめぐりあわせ」などとあり、他の辞書でも大体同じような意味を持っています。
私たちが普段使用している通り、「運」とは自分の力ではどうすることもできないことがらのことを指すようです。
私自身は、司法書士試験の合格に必要なのは実力がほぼ全てであって、運の要素は少ないと考えています。
司法書士試験には毎年数百人が合格しますが、「運が良かったから合格した」と言っているのは、わずかに合格点を上回った人や、順位が下位の人に多いのではないかというのが私見です。
そのような人の中には、最後に解答を変更して合格した人やたまたま自分の得意分野が出たから合格した人もいるでしょう。
司法書士試験は、合格レベルにある人でも少しのミスで落ちたりするようなギリギリの状態で競い合っているわけですから、試験内容やその日のコンディションによって左右される部分も確かにあり、それは運と言えるのかもしれません。
全く同じメンバーで違う年に受験したり、試験内容が同じでも別の日に受験したりしたら、順位が下位になればなるほど合格者の多くが入れ替わるという可能性も否定できません。
また、そもそも相対評価の試験ですから、自分がどれだけできたところで自分より上の人が数百人いたら合格できないわけで、その点でも運と言えるかもしれません。
このように問題や他の受験生などの要素によって合否が左右されるという側面は確かにありますが、それは司法書士試験に限らず他の試験でも同じことで、司法書士試験などの難関試験ではその要素が強いというだけのことです。
しかし、合格レベルに達するまでは完全に自分の努力であって、そこに運の要素はありません。
言い換えると、実力があってこそ初めて本試験における運の要素に関する議論ができると言えるのかもしれません。
私は司法書士試験には72位で合格していますが、その年の合格者数が632人(受験者数は15,440人)なので、十分に上位合格と言えるかと思います。
私が受験した年は不動産登記法の記述の1問目がやたらと難しくて、解答を導き出すのには30分ほどかかりました。
結果だけを見ると記述も上位だったわけですが、仮にその1問目が解けていなかったとすると、動揺や焦りから他の問題もズルズルと行ってしまって基準点すら超えなかったかもしれません。
しかし、普段から努力を重ねて実力があったからこそ、未知の難問でも最後まで諦めずに考えて解答を導き出すことができたわけです。
問題によって合否が左右されるのは確かに運と言えるのかもしれませんが、弱点や苦手な分野があるのであれば1つずつ潰していって運の要素を限りなく排除していくのが本当の実力者だと思います。
仮に凡ミスや問題との相性が悪くてギリギリで落ちた人も合格レベルの実力があるわけですから、弱点をなくすように努力を続けていけばいずれは合格を勝ち取るでしょう。
一見運で受かったように見えても、合格者はみんな努力をしています。
司法書士試験の合格に必要な「運の要素を限りなく排除していくこと」とは、言い換えれば、「人事を尽くして天命を待つ」ということでもあります。