司法書士試験と行政書士試験。
世間には司法書士と行政書士の違いが分からない人も多いですし、これらの試験を受験されることを検討されている方は難易度の違いも気になるかと思います。
両方とも「書士」と付いていて似たような名称なのも混乱を招く原因なのだと思いますが、この2つの試験、両方の試験の合格者として難易度の比較をしてみたいと思います。
なお、以下は私の個人的な見解であること、行政書士試験の悪口を言うつもりではないことをご了承ください。
結論から言えば、司法書士試験は行政書士試験の7倍は難しいというのが個人的な感覚です。
私は、司法書士試験の勉強を始める前は行政書士試験の勉強をしていました。
当時法律の初学者だった私は仕事をしながら資格予備校に通っていましたが、行政書士試験の合格までに要した勉強期間は確か6ヶ月強で、総勉強時間は600~700時間程度だったかと思います。
行政書士試験の合格点数は180点ですが、私の点数は200点強だったと記憶しています(もう随分前のことなので、勉強時間も点数もうろ覚えなのですが)。
結果だけ見ると余裕で合格したように思えますが、全てが一からの勉強だったため、受験生時代はそれなりに苦労しました。
私は元々趣味で法律の勉強をしていたのですが、行政書士試験に合格してもまだまだ物足りなさを感じており、合格した勢いそのままに司法書士試験の勉強を始めましたが、これが結構な地獄の始まりでしたね。
司法書士試験を選んだ理由は、司法書士は行政書士の上位資格というイメージがあり次に目指すのには最適そうだったこと、後は刑法と民事訴訟法を勉強してみたかったという単純な理由からです。
もちろん司法試験にも興味はありましたが、法科大学院は仕事があるため通うのが難しく、当時法律家になることを考えていなかった私にとって予備試験は敷居が高く感じました。
司法書士試験も1年で合格するつもりで仕事をしながら資格予備校に通い、1年目は2,000時間程度の勉強時間を確保したのですがあえなく惨敗しました。
当時は真剣に合格するつもりだったので悔しかったのですが、今から考えると圧倒的に勉強時間が足りなかったのだと思います。
仕事をしながら2,000時間の勉強時間を確保するのはなかなか大変で、心身ともに仕事やプライベートへの影響が大きかったので、2年目以降は大幅にペースダウンし、独学でマイペースに勉強を続けました。
結局4年目で合格し、総勉強時間は4,000時間程度だったかと思います(ちなみに、総勉強時間には勉強の合間の小休止なども含まれています)。
単純に勉強時間だけ見ると数倍程度なのですが、行政書士試験は絶対評価の試験で300点満点中180点以上の6割取れれば合格する試験なのに対し、司法書士試験は上位3~5%程度が受かる相対評価の試験で、正答率も7~8割は必要です。
行政書士試験は「勉強すれば受かるだろう」という感覚があるのに対して、司法書士試験は「いくら勉強しても受からないんじゃないか」という絶望感がありますので、その難易度は単純に比較するのが難しいかもしれません。
司法書士試験と行政書士試験は重複している科目が複数ありますので、私も司法書士試験の勉強をする際に行政書士試験で勉強した知識は役に立つと思っていたのですが、難易度が違いすぎて大して役に立たなかったですね(自分が気付いていないだけで実際には役に立っていたのかもしれませんが)。
会社法ははっきり言ってレベルが違いすぎますし、民法も司法書士試験では高い正答率が求められますのでかなりの差があるように思います。
役に立ったと思えたのは司法書士試験ではマイナー科目である憲法くらいでしょうか。
それから、行政法の知識も勉強する上では多少は役に立ったかもしれません。
いずれにせよ、難易度の差はそれほどまでに大きいので、私のように行政書士試験に合格してから安易な気持ちで司法書士試験に挑戦される方は、それなりの覚悟が必要だということを肝に銘じていただければと思います。
いっそこれら2つの試験は全くの別物と考えて、まっさらな気持ちで一から勉強するくらいのつもりの方が良いかもしれません。
行政書士試験では授業で六法を使用しませんでしたし、六法がなくてもテキストに書いている条文だけで合格は十分可能なのですが、やはり法律学習は条文が基本なので、最初から司法書士試験を視野に入れている方は六法で条文を読むことをおすすめします。
また、司法書士試験に合格する実力がある方は行政書士試験にはサクッと受かってしまう方も多いですので(ダブルライセンスで仕事をしている方もよく目にします)、司法書士試験を視野に入れている方は最初から司法書士試験の勉強を始めた方が良いようにも思えます。
私は今司法書士として仕事をしていますので、結果として司法書士試験の勉強を始めたことは後悔していませんが、これから司法書士試験に挑戦することを考えておられる方は参考にしていただけますと幸いです。
以上、司法書士試験は行政書士試験の7倍は難しいというお話でした。