7月2日(日)司法書士試験当日。カーテンを開けて寝たおかげか、朝の6時にはスッキリと目が覚めました。ホテルの窓から外を眺めると、六甲山の上には梅雨時とは思えない青空が広がっており、天が見守ってくれているような気がしました。
しかし、若干お腹が痛むのを感じました。エアコンのせいか、気が張り詰めていたせいか、はたまた昨日の食べ慣れていない高級カツ丼のせいかは分かりません。胃がキリキリ痛む感じだったので、恐らく緊張していたのでしょう。
午前9時半の試験の開始まではまだかなり時間があるので、試験中にお腹がならないように昨日買っておいたサンドイッチをゆっくりと食べ、コーヒーを飲んで着替えます。
睡眠時間は6時間ほどでしたが、眠気を感じることはありませんでした。不安を感じることもなく、意気揚々とすることもなく、黙々と準備を進めます。過去3回の受験経験と勉強を積み重ねてきた自信があったのでしょうか、不安よりもわくわく感が強く、武者震いがするのを感じたほどです。
お試し受験の方を除いて、試験当日は睡眠不足と緊張で今にも崩れそうな方も多いかと思います。でも、不安になる必要はありません。時の運もありましょうが、本当は、試験前日までに勝負は十中八九決しているのです。本番ではあくまでも「自然体」で、ただ自分の力を出すことに集中すれば良いだけです。もし、自分の力を出し切っても上位約3%の合格者の中に入れなければ、それは日々の修行が足りなかったという神様からのメッセージであり、次はもっと勉強すれば良いだけの話です。
午前7時半には芦屋のホテルを出ました。ペットボトルの水を持って、コンビニでおにぎりを3個(2個は昼食用、残り1個はお腹が空いたときのためのスペア)購入し、たまたまコンビニの前に止まっていたタクシーを拾います。どうもこの日はついているような気がしました。
タクシーに乗り込むと、青空にもかかわらずポツポツとにわか雨が降ってきましたが、試験会場に到着する頃には止んでいました。JR芦屋駅前から甲南大学(岡本キャンパス)まではタクシーで15分程度です。料金は1,200~1,300円程度だったと思います。
試験会場前には予備校のスタッフがパンフレットを配っているお馴染みの光景が広がっていました。その間を颯爽とタクシーで通り抜け、正門前に乗り付けるのはちょっと快感でもあります。
甲南大学に来たのは初めてですが、周辺は高級住宅街ということもあって、綺麗で落ち着いた印象です。
高槻在住の私の最寄り会場は大阪の関西大学なので、過去3回は関西大学で受験したのですが、受験仲間からの勧めもあって今回は甲南大学で受験することにしました。甲南大学は関西大学に比べて受験生の数がかなり少なく、1,000番台の受験生はいません。人が少ないので落ち着いた雰囲気の中で受験することが出来ます。
大学の構内に入り、案内に従って受験会場の建物(1つしかありません)に入ると、私の受験番号から始まる番号は上の階と記載された案内版が目に入りました。一番前の席です。「やった!」と心の中で叫びました。少なくとも前に他の受験生が座っていることはありません。
受験会場についたのは午前8時前。教室に入れるのは8時半からだったので、しばらく1階のロビーで時間を潰します。それほど混雑していないので椅子に座ってゆっくりと過ごすことが出来ました。周りの受験生は皆緊張した面持ちでテキストを開いたりしています。
時間が来て教室へと向かうと、更なる幸運が待ち構えていました。教壇に向かって一番前の一番右側の2人掛けの席で、隣は誰もおらず、1人で使用することが出来ます。他のほとんどの受験生は3人掛けの席の右端と左端に座っていますが、大学の大教室の席というのは大体連結されていて、周りの人が動くたびに揺れたりするし(特に記述)、隣に人がいるとスペースを広く使えず気を遣うのであまり好きではありません。
外はかなり蒸し暑かったのですが、教室内の空調も丁度良い感じに効いていました。また、甲南大学は関西大学とは違い、休憩時間に教室から全ての荷物を持って退出する必要がありません。お昼ご飯も教室で食べることが出来、ご丁寧にゴミ袋まで用意してくれています。
教室の椅子に座り、試験開始時刻(9時30分)を待つまでの時間は一番緊張する時でもあります。机の上には、HBの鉛筆3本、消しゴム2個、カランダッシュのボールペン2本、そして時計(予備の時計はカバンの中)、ミネラルウォーターを置きます。私は会場ではミネラルウォーターしか飲みません。あまり色々と飲み過ぎてトイレに行きたくなっても困るし、本当に集中しているときは、食べ物飲み物は最低限のものだけで十分です。試験開始時刻が近づいてきたら水を少し口に含み、呼吸を整え、姿勢を正して椅子に座ります。人生で一番集中する5時間が始まります。
まずは憲法。比較的憲法は得意なのですが、2問目はかなり悩みました。しっかりと勉強していれば3問中2問は取れるでしょう。憲法結果:2/3
次に民法。今年の民法は最後の2択で迷う問題が何問かあり、まあまあ難しかったように思います。難しい問題と簡単な問題がはっきり分かれている印象です。過去2年の試験では民法はそれぞれ2問しか落としませんでしたが、今年は3問落としました。民法結果:17/20
続いて刑法。基本事項ばかりで拍子抜けしました。かなり易しい印象です。3問取りたいところです。刑法結果:3/3
最後に会社法・商法。まあまあ難しいという意見が多かったようですが、会社法はほとんど考えることなく知っているか否かで切っていくので、解いているときは簡単だと感じました。しかし、会社法で2問落としたのでそれほど簡単ではなかったのでしょう。商法は基本中の基本です。会社法・商法結果:7/9
解き終えたのにかかった時間は1時間15分程度だったと思いますが、本試験なので残り45分を使って最後の最後まで見直しをします。民法が難しい印象だったので試験中はあまり手応えがなかったのですが、午前の部の合計結果は29/35と思ったよりも良かったです。
11時30分に午前の部が終わり、気分転換のために教室の外にあるベンチで昼食を取ります。私の昼食はいつもおにぎり2~3個です。あまりがっつり食べると眠たくなったり胃がもたれたりするのでよろしくありません。3時間だけ乗り切れば良いのですから、適度にお腹が満たされるものが丁度良いです。持ち運びしやすく、炭水化物で腹持ちも良いおにぎりは最適だと思います。
食後は少し大学構内を散歩して脳をリフレッシュさせました。午前の部の結果が思わしくなくても、引きづらないことが肝心です。午後の部の3時間はトイレに行っている暇はないので、出来るだけ教室に戻る直前にトイレを済ませます。試験会場のトイレは非常に空いていて待つことはありませんでした。
3時間あるにもかかわらず全く時間が足りない午後の部が始まる前は相当なプレッシャーがかかるかと思いますが、焦らず冷静に、かつ時間がないので自信を持って大胆になることが必要です。問題文をよく読み(全部の肢は読まない)、普段やらないようなことは本番ではしないことが肝心です。
私はいつもTシャツの上に長袖シャツを着て受験しますが、シャツの袖が記述の邪魔になるので、午後の部が始まる前にシャツを脱いで戦闘態勢に入ります。ちなみに、難しい問題は一旦飛ばすこともありますが、基本的に午前の部も午後の部も前から順番に解いていきます。
まずは民訴等(民事訴訟法・民事執行法・民事保全法)。2問目は難しかったですが、民訴は私の好きな科目ということもあり、全体的にはそれほど難しさは感じませんでした。民訴等結果:6/7
次に司法書士法・供託法。多少悩む問題はあるものの、こちらもそれほど難しくはありません。合格レベルの方であれば、民訴等合わせて9~10問は取れるのではないでしょうか。司法書士法・供託法結果:4/4
続いて不動産登記法。時間が足りなくて急いで解いているのもありますが、不動産登記法が今回の試験で一番手こずったように思います(毎年のことですが・・・)。やはり民法と不動産登記法が司法書士試験の肝ですね。不動産登記法結果:14/16
最後に商業登記法。例年通り、商業登記法に入る時点で試験開始から約1時間が経過していたので、1問1分程度の凄まじい早さで解いていきます。あまり覚えてはいませんが時間がかからなかったので簡単だったのではないでしょうか。商業登記法結果:7/8
択一を終えたのは午後2時10分過ぎでした。模試では択一60分を余裕で切ることが出来たのですが、本試験は考える問題が多いのか、慎重になってしまうのか、やはり時間がかかります。マークシートの塗りつぶしに関してはかなり時間短縮が可能だと思いますので、これは来年受験することになった場合の課題となります。受験後に知ったのですが、どうやら、マークシート専用の鉛筆や消しゴムもあるようですね。
択一を終え、すぐさま記述に入ります。試験中、水を飲むことはありません。マラソンに比べたら楽なもんです。不動産登記法の記述は、模試やテキストでは解いたことがない論点ばかりで、かなり考えさせられました。第1欄目の名変→更生は書けたものの、判断にかなり時間を要しました。一発目に時間がかかる論点を持ってくるのは意地の悪い試験委員の狙いでしょうか。
第2欄目は抵当権の債務者の名変を抜かしてしまいました。枠ずれせずに正確に書けている人はかなり少ないように思います。
第3欄の賃借権設定と同意の登記は書けましたが、時間が無かったこともあり全体的に細かいミスはいくつかあります。
不動産登記法を終わり、商業登記法に入ったのは午後3時15分でした。残り時間的に全部を埋めるのは難しそうだったので、1欄だけは完璧に仕上げようという思いで問題文を読み始めました。
存続期間を目にして最初に解散の論点が頭に浮かび、小躍りしたくなりました。しかし、商業登記法では論点を1つずつじっくりと読み進めていくことが重要です。解散に目を向け、その次の一番の重要論点である公開化に気付かせないのが意地の悪い試験委員の狙いだったのではないかと思っています。公開化を見逃した方も多いのではないでしょうか。
私は試験直前の1週間、オートマシステム記述式の種類株式の問題を散々やっていたので、なんとか気付くことが出来ました(ちなみに直接にはオートマシステムにはこの形式の問題はありませんでした)。
1欄を解いた時点で午後3時45分。残りは15分しかありませんでしたが、2欄の問題を見てみると、かなり書く数が少なそうでしたので、いけるのではないかと思いました。自分に「出来る」と言い聞かせ、ポジティブな気持ちになり書き進めることが出来ました。
最後の最後に清算会社だから支店の廃止はツ区分じゃなくて9,000円になるんじゃないの?といったことが何故か頭に浮かび、高速で迷ったあげく普段ならしないであろう登録免許税を書き換えるという失態を犯しました(恐らく、脳みそが疲れていたんでしょう)が、登録免許税、添付書類1点、登記の事由の清算人の就任年月日書き忘れを除いて、全て書くことが出来たように思います。
記述式の点数は予備校の採点であれば45~50点くらい、低く見積もっても40点はありそうな感じですが、去年は商業登記法でかなり厳しい採点をされた(20点はあると思っていたけど7点しかなかった)のでどうなるかは分かりません。
基準点の予想は、全くの個人的な見解ですが、午前26、午後25程度ではないかと思います。去年よりは簡単に感じたので去年より若干上げています。記述も去年よりは簡単だと思いますので、35程度はあるかと思いますが、記述だけは蓋を開けるまでは分かりません。
試験終了の1、2分前にはボールペンを置くことが出来ました。カランダッシュのボールペン、非常に使いやすかったです。
去年の午後の部は難しかったこともあり、試験中は半分意識がなくがむしゃらに解いていたのですが、今年はさすがに余裕こそ感じられなかったものの、問題文と向き合い、淡々と解き進めることが出来ました。「無我の境地」とまでは行きませんが、かなり心が整っていたのではないかと思います。
外は非常に蒸し暑かったですが、梅雨晴れの中、どことなく爽やかな気持ちで試験会場を後にしました。