株式会社を設立する場合には、発起人が資本金を出資し、これを資本として会社を運営していきます。会社成立後は、資本金を出資した発起人は株主となり、定款で引き受けた株式数を保有します。また、配当すべき利益が出た場合には、株主はこれを享受することができるなどの権利を有します。
会社成立後に資本金を増やす(増資)場合には、新たに株式を発行し、出資者を募る方法などによって行うことができます。例えば、100株を1株1万円で募集すれば、100万円の増資が見込めます。これとは別に、あらかじめ、将来新株を取得できる権利を与える「新株予約権」というものがあります。今回は、この新株予約権について解説していきます。
例えば、新株予約権を5,000個(1個あたり1株)発行して、従業員5名に1,000個ずつ付与したとします。この場合、1人あたり1,000株(1,000個×1株=1,000株)の新株を将来的に取得することができます。
新株予約権発行時には、将来的に新株予約権を行使して実際に株式を取得する場合の行使価格を決めておきます。上の例で、行使価格を1株1,000円としておくと、1,000個を行使する場合には、100万円を支払うことで1,000株を保有する株主になることができます。
では、どのような場合にこの新株予約権が利用されるのかというと、上の例を用いて説明します。仮に、新株予約権の発行時の1株あたりの評価額が1,000円として、5年後にこの評価額が1株あたり2,000円に上昇したとします。しかし、新株予約権の行使価格は1株1,000円のままですから、本来1,000株を取得するには200万円が必要であるところ、新株予約権を行使すれば半額の100万円で取得できることになります。
このようなことから、従業員や役員にこの新株予約権をあらかじめ付与しておくことで、将来的に大きなインセンティブとなるため、労働意欲を促す目的として利用することができます。このインセンティブ的に新株予約権を付与することを「ストックオプション」といいます。
新株予約権の発行は、このようなストックオプションを目的としたもののほか、社外の投資家などに向けた資金調達の目的としても利用されることもあります。では、この新株予約権を発行するにはどのような手続きを必要とするのかもみていくことにしましょう。
新株予約権は、非公開会社では、原則として株主総会(特別決議)でその発行内容を定めます。ちなみに非公開会社とは、株式の譲渡について制限規定(株式譲渡について株主総会の承認を要する等)が設けられている会社をいいます。日本の大多数がこの非公開会社にあたります。今回は、非公開会社が新株予約権を発行する場合を想定した発行方法を中心に解説します。
株主総会では、次の事項を定めます。①募集新株予約権の内容及び数②募集新株予約権と引き換えに金銭の払込みを要しないこととする場合は、その旨③募集新株予約権と引き換えに金銭の払込みを要することとする場合には、募集新株予約権の払込金額又はその算定方法④募集新株予約権を割り当てる日⑤募集新株予約権と引き換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
上記①の内容として、新株予約権の発行数や1個あたりの株式数、新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法、新株予約権の行使期間などを細かく決定していきます。また、上記②の決定事項にあるように、新株予約権の発行の段階では、払込みを要せず、「無償」とすることができます。
新株予約権の発行事項が決定すると、募集→申し込み→割当といった流れで新株予約権が付与されますが、特にストックオプションの場合などは、募集→申し込み→割当という流れを一体的に総数引受契約という形で新株予約権を割り当てることも多いです。
ここで、新株予約権の発行に関する登記のお話もしておきたいと思います。新株予約権の発行時に登記すべき事項は次のとおりです。新株予約権の内容として、①新株予約権の目的である株式の種類及び数又は算定方法②行使に際して出資される財産の価額又は算定方法③行使に際して現物出資されるときは、その旨並びに現物出資財産の内容及び価額④行使期間(その他行使の条件)⑤取得条項付新株予約権とするときは、その旨、取得事由、一部取得の方法並びに取得対価の内容及び数又は算定方法等、を登記します。
その他の募集事項に関して、①募集新株予約権の数②発行に際して金銭の払込みを要しないときは、その旨(払込みを要する場合は、発行時の払込金額)を登記します。
新株予約権の発行の登記は、発行の効力発生日から2週間以内に本店の所在地を管轄する法務局へ登記申請を行う必要があります。登記申請にかかる登録免許税は、9万円です。
新株予約権の行使は、数人が権利を有する場合に全員が同時にする必要はありません。各人がそれぞれのタイミングで行使することができます。新株予約権が行使されると、新株予約権の登記の内容が変わりますから、その都度変更登記が必要となります。この場合にかかる登録免許税は、3万円です。なお、新株予約権が行使されると、発行済株式総数が変化します。すべての新株予約権が行使されても発行済株式総数が、発行可能株式総数を超えないように枠を確保しておく必要があります。
今回は、新株予約権の発行についての概要を解説してきました。実際に新株予約権の発行を行う場合には、税務上のチェックなども必要となりますので、司法書士に加え、税理士とも相談しながら進めていくのがよいでしょう。
大阪府高槻市の司法書士中嶋国際法務事務所では、新株予約権の発行や行使に関するご相談・ご依頼を承っております。投資家が外国人で英文契約書を締結する場合にも対応可能です。対応地域は、高槻市周辺の北摂地域(高槻市、茨木市、吹田市、摂津市、島本町など)を中心に、大阪府下全域および全国対応を行っております。
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