不動産登記には、その形状や用途など土地や建物の状態を登記する表示登記と所有権や抵当権などの権利を登記する権利登記の2つがあります。前者は、土地家屋調査士が代理のできる業務であり、建物が新築された際や土地の分筆や合筆の際などに行います。こちらは、法律上登記することが義務となっています。
一方、後者の権利に関する登記は、司法書士が主に代理人となって申請することができる登記ですが、権利登記全般が義務とはされていませんでした。ところが、令和6年4月1日より、初めて相続登記の義務化がスタートしました。さらに、令和8年(2026年)4月1日より、住所・氏名変更登記(住所等変更登記)の義務化がスタートすることが決定しています。今回はこれについて解説していきます。
そもそも、相続登記が義務化された背景は、元々相続登記が義務ではなかったために、長期間相続登記が放置される間に次々に相続が発生することにより、現在の所有者(不動産の承継者)が誰であるかがわからず、所有者が不明の不動産が増え続け、経済的損失等社会問題が増大しつづけていたことに起因します。
さて、登記簿上の所有者と実在の(または実在であった)人物との同一性は、登記簿上の住所と氏名の一致によって判別します。相続登記においても、登記簿に記載されている人物と今回登記される相続登記の被相続人の同一性を証明するために、登記簿上の住所から、最後の住所までの沿革を証明できる書類(住民票の除票や戸籍の附票)を提出することになります。
住民票の除票には、原則として死亡時の最後の住所のほか、前住所が記載されるため、少なくとも、死亡時の住所とその前の住所を証明することができるということになります。ところが、登記簿上の住所から2回以上住所を移転した場合には、住民票の除票では沿革を証明できないことになります。このような場合には、戸籍の附票という書類を本籍地に請求することになります。
戸籍の附票は、その戸籍が効力をもつ間の住所の変遷をすべて記載してくれるものです。戸籍が効力を持つとは、例えば、同じ本籍地であっても、平成20年3月2日に法律により戸籍の様式が改製された場合には、その戸籍の附票に記載されるのは平成20年3月2日以降の住所の変遷ということになるわけです。
もちろん、改製前の戸籍の附票も存在しますから、それ以前の住所の変遷を調査したければ、その戸籍の附票を取得すればよいように思えます。ところが、ここに問題があります。令和元年6月20日施行の法改正により、住民票の除票・戸籍の附票の保存期間が消除されてから150年間市区町村役場に保存されることになりましたが、それ以前は保存期間が消除されてから5年間とされていました。
つまり、平成26年6月19日までに消除された住民票や戸籍の附票は、5年以上経過した現在では基本的には取得することができなくなっており、登記簿上の所有者と実在の(または実在であった)人物との同一性を証明することができなくなってしまっているのです。
相続登記において、この住所の沿革が証明できないと相続登記ができないということではありませんが、所有者不明の不動産の解消を目的とする相続登記義務化に合わせて、住所・氏名変更登記も義務化されることになりました。
つまり、登記簿上の所有者と実在の(または実在であった)人物との同一性をスムーズに証明できる状態にするために、今回相続登記の義務化から2年経過した令和8年4月1日より、住所・氏名変更登記の義務化がスタートするというわけです。ここからは、具体的な改正内容についてお話していきます。
まず、期限についてですが、住所や氏名が変更になってから2年以内に変更登記をする必要があります。注意が必要なのは、義務化がスタートする令和8年4月1日以前に住所や氏名が変更になっている場合でも適用されるという点です。この場合は、令和10年3月末までに変更登記をする必要があります。
次に罰則ですが、正当な理由がないのに申請を怠った場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。所有する不動産を売却する場合に登記簿上の住所・氏名と現在の住所・氏名が異なる場合には、買主名義に所有権移転登記をする前提として、住所・氏名変更登記をしなければなりませんが、これまでは売却するときに合わせて行えばよかったものが、法改正後は2年以内にしなければいけなくなるというわけです。
通常は、マイホームを購入するときの住民票はその時に居住する住所にあり、マイホームを購入してから新居の住所地に住民登録を動かすことになります。そのため、マイホームを購入する多くの人は、登記簿上の住所と転居後の住所は異なることになります。ところが、住民票を新住所に移しても、役所と法務局の手続きは連動していないため登記申請は別途しなければならないのが現状です。
この点にも改正がされることになります。今回、住所・氏名変更登記の義務化に合わせて、「スマート変更登記」というものが導入されます。これは、簡単にいうと、法務局に事前に必要事項を申し出しておくことにより、法務局が住基ネットに照会して、職権で住所・氏名変更登記を行ってくれるというものです。この流れについて、少し説明しておきます。
まず、所有権を取得する際に、申請情報と合わせて住基ネットに照会する際に必要な事項(氏名、ふりがな、住所、生年月日)を申し出ておきます。そして、所有者の住所や氏名に変更があった場合には、申し出の際に届け出たメールアドレス宛に(申し出てない場合には書面で)、職権で変更登記をしてもよいかの確認の通知が届きます。それに同意すれば、所有者が申請をしなくても法務局の職権で登記してもらえるという流れです。
すでに所有者になっている場合には、この申し出の手続きだけを単独で行うこともできます。また、令和8年4月1日の義務化に先んじて、令和7年4月21日以降に所有権を取得する場合にこの申し出を合わせてできるようになっています。住所・氏名変更登記は、自分で申請する場合には、登録免許税(収入印紙代)として不動産1個につき1,000円かかりますが、このスマート変更登記は登録免許税がかかりません。
以上が住所・氏名変更登記の義務化の概要ですが、さらに詳しくお聞きになりたい場合には、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

