会社を設立する場合には、会社の本店所在地を定めて登記をしなければなりません。会社の本拠地のことを「本店」といいますが、これとは別に「支店」を設置することができます。この「支店」とはどういうものでしょうか?
本店所在地以外で、営業所や出張所といったものを設けているのを見ることがあると思います。支店とは、そのような営業所や出張所といった単なる会社の営業の一拠点というものではなく、本店とは離れて独自に営業活動を決定し、対外的に取引をなしえる組織のことをいいます。
そのような独立した営業決定をおこなう目的を果たすために、支店を統轄する「支配人」を置くことができます。支配人は、会社法において「会社に代わってその事業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をなす権限を有する」と定義されています。
支店は、定めたのであれば支店設置の登記をしなければなりません。これが単なる営業所や出張所であれば設置登記の義務はありません。支店設置の登記は、本店所在地を管轄する法務局において行います。
本店所在地を管轄する法務局で支店設置の登記をするとともに、支店所在地を管轄する法務局においても登記をすることが義務付けられており、支店の登記簿というものも存在していましたが、令和4年8月末をもって支店登記は廃止されました。
そのため、支店所在地を管轄する法務局での登記は申請せず、本店所在地を管轄する法務局のみで支店設置の登記をします。例えば、大阪市北区に本店所在地がある会社が、高槻市に支店を設置した場合を例にとって説明します。
大阪市北区を管轄する法人登記の法務局は、大阪法務局(本局)で、高槻市を管轄する法人登記の法務局は、大阪法務局北大阪支局です。かつては、大阪本局に支店設置の登記をし、さらに大阪法務局北大阪支局でも支店設置の登記をすることになっていたということです。
そして、登記簿も本店の登記簿と支店の登記簿は異なっており、支店の登記簿は本店の登記簿の一部が記載されたものが発行されていました。つまり、例の場合では、高槻市の支店だけの登記簿が存在していたわけです。
また、支配人を支店においた場合にも、その旨を登記する必要があります。これについても、本店所在地を管轄する法務局に申請します。申請時の登録免許税(収入印紙代)は、支店1カ所につき6万円です。支配人の登記については、3万円となっています。
支店設置をした場合には、設置をした日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局に支店設置の登記を申請しなければなりません。ここで、その際に必要となる書類についても触れておきたいと思います。
支店の設置は、取締役会で決議をします。取締役会を設置していない会社の場合には、取締役の過半数の決定によります。登記申請の際には、多くの書類を要せず、これを決定した「取締役会議事録」または「取締役決定書」を添付することで足ります。司法書士に依頼する場合には、委任状も必要となります。
今回は支店の設置についてお話ししましたが、ここで支店登記に関わるお話を少し付け加えておきます。一度設置した支店を移転することも廃止することもでき、これらの変更についても登記申請を要します。この場合の登録免許税は、3万円です。添付する書類は、先ほどお伝えした「取締役会議事録」または「取締役決定書」、司法書士への委任状です。
支配人を置いた場合には、支配人としての印鑑登録をすることができます。支店における営業の決定権をもち、対外的に取引を行う責任者ですから印鑑証明書の提出が求められる局面はあるでしょう。印鑑登録の際には、印鑑届出書のほか、会社の代表者の保証書の提出を要します。
支店設置を検討中のお客様は、手続き方法などについて詳しくご説明いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。