不動産の相続登記をする場合、民法で規定されている相続分割合(法定相続分割合)で登記することができますが、相続人が複数いる場合には、不動産を共有する形になります。
不動産を共有するということは、割合に応じた面積を所有するという意味ではなく、観念的な共有状態を指します。つまり、不動産の所有権全体を売却するためには、全員の意思の合致が必要となります。
また、共有名義のままでさらに名義人の誰かが死亡して相続が発生すると、不動産全体を疎遠な関係になった人同士(例えば、叔父と甥、従兄弟同士など)が共有することにもなり、収拾がつかなくなることがあります。
このようなことから、不動産の共有状態は望ましい状態とはされておらず、私たち司法書士も基本的にはおすすめしません。では、どのようにすれば共有状態を避けることができるのでしょうか?
民法では、相続人全員で話し合うことにより、法定相続分どおりではない遺産承継の方法を決めることができると定めています。これを「遺産分割協議」といいます。
例えば、遺産分割協議により、不動産の名義を相続人のうちの1人にして、他の相続人は預貯金を取得するといったような分け方をすることにより、不動産の共有状態を避けることができます。
遺産分割協議について少しご理解いただけたかと思います。ここからはこの遺産分割協議により決定した内容で不動産の相続登記をするためには、どんな書類を用意する必要があるのかを見ていきましょう。
相続登記をする場合には、遺言を残して亡くなられた場合を除き、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本をすべて集めることからスタートします。
出生から死亡までの戸籍謄本等をすべて集めなければ、相続人が誰かを証明できませんので、まずはここから始めます。相続人については、被相続人の死亡後に取得した相続人全員の現在の戸籍謄本が必要です。
相続登記に必要な書類には、期限が決められているものは原則としてありませんが、相続人の戸籍謄本が被相続人の死亡年月日よりも後に取得されていなければ、被相続人よりも長く生きていることが証明できないためです。
また、相続人の中にすでに死亡している人がいる場合には、さらにその人の相続人を調査するための戸籍謄本等の収集が必要となります。数次相続や代襲相続という状態を指します。
戸籍謄本関係の書類がすべて揃ったら、相続人が確定しますので、遺産分割協議を行い、その内容を書面にします。この書面を「遺産分割協議書」といいます。遺産分割協議書には、相続人全員が署名(記名)し、実印で捺印します。そして、それが実印であることを証明するために、全員の印鑑証明書を揃えます。
この印鑑証明書には期限がありませんので、発行日から3ヶ月以上経過しても、相続登記では使用できます。不動産を取得する相続人の印鑑証明書は提出しなくても登記はできますが、実務では添付することが多いです。
次に、不動産を取得する人の住民票が必要です。これは、相続登記に限らず、不動産登記では所有名義を取得する人は必ず提出するよう規定されています。
また、被相続人と相続登記する前の登記記録上の名義人が同一人物であることを証明しなければならないのですが、これは住所と氏名が一致していることを証明する方法で行います。
被相続人の住民票の除票に最後の住所とその前の住所が記載されています。また、戸籍の附票を取得することで、その戸籍が効力を有していた間の住所の変遷が記載されています。
これらのいずれかを取得することによって、被相続人の登記記録上の住所と最後の住所の一致を証明できるケースが多いです。なお、氏名が変わっている場合は、戸籍謄本等で証明できます。
ただし、平成26年6月19日時点で消除されている住民票の除票や戸籍の附票の役所での保存期間は5年(それ以降は150年)であるため、場合によっては、住所のつながりを証明することができません。
この場合には、市役所の廃棄証明書と被相続人が不動産名義を取得した時の登記済証(登記権利証)を添付することで、同一人物と証明する運用になっています。
遺産分割協議によって相続登記をする場合に必要とされる一般的な書類は上記のようなものになりますが、登記申請には登録免許税を納付することになっています。
相続登記の場合には、一部納付免除に該当するケースを除いては、不動産評価額に1000分の4を乗じた金額となります。そのため、その不動産評価額を証明するために、納税通知書のコピーや評価証明書のコピーを添付します。
相続登記に必要な書類のほとんどは登記完了後に原本を返却してもらえますが、そのためにはコピーをして、そこに「原本と相違ありません」と記載して、氏名の記載と押印が必要となります。
戸籍謄本等は、枚数が多くなることがあるため、すべてをコピーして奥書の処理をしていくのが面倒であるケースも多いです。そのため、戸籍謄本等は相続関係説明図を作成することで、この原本還付に必要な処理をしなくてもよい取り扱いになっています。
今回は、遺産分割協議にもとづく相続登記をする場合の必要書類についてお話ししましたが、実際にこれらの書類を漏れなく正確に揃えるには、相応の手間と時間がかかるため、慣れていないと時間がかかります。
これから遺産分割協議にもとづく相続登記を検討されている場合には、一度当事務所までご相談ください。
