司法書士業務

相続放棄とは?手続き・必要書類・期限などの注意点をわかりやすく解説!

財産を相続するということは、良いことというイメージがあるかもしれません。ところが、財産とは必ずしもプラスのものばかりではなく、借金などのマイナスのものも財産にあたります。

つまり、引き継ぐ財産が、プラスのものよりマイナスのものの方が大きい場合には、そもそも相続する権利を放棄したいということになります。これが相続放棄をする典型的な局面といえます。

それ以外にも、遺産相続には親族間の争いを伴うこともしばしばありますから、そこに関わりたくない場合に相続関係から離脱したいケース等にも利用されます。

では、相続放棄という手続きは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。相続人同士で話し合うことを「遺産分割協議」といいますが、この話し合いの中で自分が財産を受け取る意思がない旨を表明することを相続放棄だと誤解されているケースがありますが、これは違います。

遺産分割協議の中で、自分が財産を受け取る意思がない旨を表明しても、例えば被相続人(亡くなった人)が残した借金などのマイナス財産を支払う法律上の義務がなくなるわけではありません。

相続放棄、すなわち相続人という地位から完全に離脱したい場合には、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して、家庭裁判所からその相続放棄の申述が受理されなければなりません。

相続放棄申述書は、裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。そこに必要な内容を記入し、被相続人(亡くなった人)と相続放棄する人(自分)が法律上の相続人の関係になっていることを示す戸籍謄本を提出します。

提出先の家庭裁判所は、被相続人(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。管轄が正しいことを証明するために、被相続人(亡くなった人)の住民票の除票または戸籍の附票も提出します。

参考:裁判所ウェブサイト

相続放棄申述書と附属書類を提出してから早くて1カ月程度で家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書類が送られてきて手続きが終了します。

手続きの過程で、裁判所の判断により「照会書」が送られてくることもあります。これは、裁判所がもう少し詳しく内容(事情)を知りたい場合に、いくつかの質問に答える形式になっています。

手続きが終了した際に送られてくる「相続放棄申述受理通知書」を提示することで、被相続人の相続関係から離脱していることを主張することができます。

改めて家庭裁判所に「相続放棄申述受理証明書」を請求(1通150円)することによって、別途証明書を取得することもできますが、多くの場合には「相続放棄申述受理通知書」で足ります。

相続放棄の手続きには、大きなポイントがあります。それは、期限です。いつまでも相続放棄ができるとなると、相続関係が確定しませんから、相続放棄ができる期間には制限が設けられています。相続放棄ができるのは、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならない」と定められています(民法915条1項)。これについてもう少し説明します。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、一般的には「ある人が亡くなったことによって自分が相続人となる相続が発生したという事実を知った時」が基準となります。

疎遠になっている場合には、必ずしも「死亡日=自己のために相続の開始があったことを知った時」とはならないでしょうから、死亡の事実を知らされた時がそれにあたる場合が多いでしょう。

また、法律上の前の順位の相続人が全員相続放棄をした場合には、次の順位に相続がいきます。この場合には、被相続人が亡くなった事実を知った時ではなく、「先順位の相続人全員が相続放棄をしたことを知った時」となるでしょう。

このように期限が存在する相続放棄ですが、3ヵ月を過ぎたからと言って100%相続放棄が認められないというわけではありません。3か月を過ぎたことが、あらゆる状況を勘案してもやむを得ない事情があると認められるケースもあります。どのような場合に認められるかは、家庭裁判所の判断になります。

相続放棄でもう1つ注意が必要なことがあります。それは、相続する意思があると考えられるような行為をしてしまった後で相続放棄をしようとしてもできなくなってしまうという点です。「相続人だからできる行為」などにあたるようなことをしてしまったら、相続人になることを認めたことになり、「やっぱり相続放棄します」とは言えないということです。

例えば、次のような行為がそれにあたります。①不動産や動産などを処分する(売買や贈与、担保に入れる等)②預貯金を相続人自身の用途として消費する③被相続人が貸していたお金などの返済を受領する④遺産分割協議に参加する⑤相続財産を隠すなどがあります。

葬儀費用を被相続人の財産から支出する行為がこれにあたるかどうかは状況によりますが、原則的にはその葬儀の規模や内容等が社会的通念に照らして妥当な場合は、被相続人の財産から支払ったとしても、それだけで相続人になることを認めたことにはならず、その後に相続放棄をすることもできるケースが多いといえるでしょう。

今回は、相続放棄に関するいくつかのポイントを説明しましたが、相続放棄を考えておられる場合には、個別の事情に応じて適切な方法をアドバイスさせていただきます。ぜひ一度当事務所までご相談ください。

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