司法書士業務

代表取締役は全員が海外居住でも可能?株式会社の外国人の役員変更登記について

司法書士の中嶋です。

先日、株式会社の外国人の役員変更登記を行いました。

この株式会社の株主はイギリス(英国)に所在する親会社であり、日本支社である当該株式会社の役員も全員がイギリスに居住する外国人です。

株式会社の代表取締役のうち最低1人は日本に住所を有していなければならないという従前の取扱いは、平成27年3月16日民商第29号通知をもって廃止されたのですが、これによって、代表取締役の全員が日本に住所を有しない株式会社の設立登記および代表取締役の就任登記の申請は受理される取扱いとなりました。

つまり、現在の株式会社は、代表取締役の全員が海外に居住していても、また日本人でなくても問題ありません。

今回の株式会社のケースでは、取締役が2人でそのうちの1人が代表取締役だったのですが、その取締役兼代表取締役が辞任し、新たに選任される取締役が代表取締役に就任するというものでした(取締役は全員がイギリス人)。

外国人の役員変更登記に必要となる書類の考え方は、役員が全員日本人である株式会社と基本的には異なりませんが、注意が必要なのが印鑑証明書です。

通常、海外に居住する外国人は日本の印鑑証明書を持っておりませんので、代わりに本国または居住国の官憲が作成したサイン証明書(署名証明書)が必要になります。

これは、印影ではなくサイン(署名)が本人のものに間違いないことを証明したものですが、今回のケースでは、イギリス居住の役員の方に依頼してイギリスの公証人が作成したサイン証明書を取得していただきました。

このサイン証明書は当然のことながら現地の言葉(今回のケースでは英語)で作成されておりますので、法務局に提出する際は日本語の訳文を添付する必要があります。

また、先方は日本語が分からないため、確認や署名が必要な全ての書類(株主総会議事録や就任承諾書など)は英語を併記して作成しました。

ちなみに、辞任される代表取締役については、法務局に印鑑を提出しておりましたので、サイン証明書を取得する必要はなくその印鑑を押印するだけで済みました。

無事に登記は完了しましたが、海外に居住する外国人の役員変更登記は、翻訳に手間がかかる点、サイン証明書の取得や書類の郵送でのやり取りに時間がかかる点において通常の役員変更登記よりも大変ですね。

私の事務所では、外国人の役員との英語でのやり取りや翻訳も含めて対応可能ですので、外国人の役員の変更登記にお困りのお客様はお気軽にご相談ください。

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