司法書士業務

代表取締役が代表清算人に就任する場合の住所変更登記は省略可能か

司法書士の中嶋です。

以前、株式会社の解散及び清算人選任登記を申請したのですが、少し戸惑ったことがあったので、以下に備忘録を兼ねて記載しておきます。

事案:
株式会社が株主総会の決議によって解散した場合の解散及び清算人選任登記において、従前の代表取締役がそのまま代表清算人に就任する場合で、従前の代表取締役の登記簿上の住所と代表清算人の印鑑証明書上の住所が異なる場合、前提として代表取締役の住所変更登記は必要か?

株式会社が株主総会の決議(特別決議)によって解散した後、清算人による清算手続きへと移行しますが、この清算をする株式会社(清算株式会社)の清算人には、次に掲げる者がなります(会社法第478条)。

  1. 取締役
  2. 定款で定める者
  3. 株主総会の決議によって選任された者
  4. 裁判所によって選任された者

1.の清算開始時の取締役がそのまま清算人になる場合(この清算人を法定清算人と言います)、清算人選任登記の前提として代表取締役の住所変更登記が必要になる可能性があります。

この清算開始時の取締役がそのまま清算人になる場合を指してよく「スライド」と言いますが、この「スライド」する場合に住所変更登記が必要になる理由としては、従前の代表取締役と代表清算人は同一人格とみなされるからと考えられます。

ただし、代表清算人を株主総会の決議(普通決議)で選任する場合は、前提として代表取締役の住所変更登記は不要になるようです。

これは、前述の法定清算人とは異なり、「スライド」していないため別人格とみなされるからと考えられます。

法定清算人に「スライド」する場合に住所変更登記を求められるかどうかは確かではありませんが、いずれにせよ、株主総会の決議で代表清算人を選任した場合は、前提として代表取締役の住所変更登記は不要になると思われますので、株主総会の決議で解散する場合には合わせて代表清算人も選任すれば良いでしょう。

これは、代表取締役の重任登記の場合に前提として住所変更登記が不要なのと似ていますね(この場合、重任する代表取締役は同一人格なので上記の法定清算人の考え方とは矛盾してしまいそうですが)。

私の場合は、ネットや書籍で調べた情報を頼りに知り合いのベテランの先生にも確認した上で、株主総会の決議で代表清算人を選任する方法で前提としての住所変更登記をせずに無事に登記申請が通りましたが、心配な方は事前に管轄法務局に確認した方が良いかと思います。

それにしても、「スライド」という言葉はよく使用されているようですが、誰が最初に言い出したんでしょうかね。

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